●NEWS●

アメリカを代表するギター製作家Ervin Somogyi氏が、8年間以上の年月をかけてギター製作についてまとめた本を2009年7月に刊行することになりました。『The Responsive Guitar』『Making the Responsive Guitar』の2冊で、Somogyi氏のHPより購入が可能です。従来のハウツー本とは異なり、具体的な作業についての言及のみならず、ギターを製作する上で理解しておくべき原理原則などを平易な表現でまとめた本書は、他に類を見ないものとなっています。著者のコメントにも「次世代の製作家たちにとってバイブルのようなものとなるだろう」とあるように、ギター製作に関わる人にはぜひとも読んでもらいたい本です。なお本書は全編英語のみですのでご注意ください。
またSomogyi氏自身のナレーションによるプロモーションビデオがYouTubeに公開されていますのであわせてご覧ください。

Ken Oya Acoustic Guitarsの音は以下のCDでお聴きいただくことができます。

伊藤賢一さん
最新作『かざぐるま』ではModel-Jを、3rdアルバム『海流』ではModel-FとModel-Jにて演奏されております。

竹内いちろさん
1stアルバム『竹内いちろ』で全曲Model-F(12Fjoint仕様)を使っていただいております。

押尾コータローさん
2008/1/1リリースの『Nature Spirit』に収録されている「Christmas Rose」でModel-Jを弾いていただいています。

January 23, 2007

●Soig Siberil: Du Cote de Chez Soig

SoigSiberil_du.jpg

Soig Siberil (g)
Alain Genty (b)
Pierre-Yves Prothais (per)
Karl Gouriou (sax)
Camel Zekri (g)

 フランスのブルターニュのCDショップで一番良く目にしたギタリストの名前はソイグ・シブレルであった。70年代後半頃から、アイリッシュ音楽に接近をしていったソイグは、80年代に入ると、Kornogを結成する。ほとんどがブルターニュ出身のメンバーで構成されたKornogは、ブルターニュのケルト音楽にスコットランドやアイルランドのスタイルをうまく融合させ、ブルターニュを代表するグループとして高い評価を得るようになる。アルバム製作と並行して積極的にヨーロッパやアメリカのツアーを行い、ブルターニュの音楽を知らしめていった。

 Kornogでの活動を通じ、より深くブルターニュの音楽へと入り込んでいったソイグは、その後も様々なグループを編成して演奏活動を続けていく。その後、90年代に入ると、アコースティック・ギターを中心とした演奏をおこなうようになり、ギターのソロアルバムをリリースしていく一方、各地のケルト音楽フェスティバルなどにも積極的に参加していく。

 今回取り上げたアルバムは、2003年にリリースしたブルターニュ西部の町でのライブアルバム。アルバムのタイトルは「ソイグの家の方へ」といった意味だと思うが、このタイトル自体が、このユニット名になっているようでもある。ソイグのギターの音色は、ピエゾタイプのピックアップの音色が強いせいか、決していいものとはいえないが、ギター2本、ベースとパーカッション、それとサックスを加えた独特の編成による音楽は、アイルランド、スコットランドのケルト音楽とはまた異なる趣きのものでとても魅力的だ。特に、フレットレスベースとサックスが加わっていることが大きいのかもしれないが、とてもうまくジャズの要素を取り入れているように感じる。

 収録曲の約半数がトラッド、残りはソイグともう一人のギタリストキャメル・ゼクリのオリジナル。あいにく不勉強のため、トラッドに関しては原曲をほとんど聴いたことがないのだが、全編を通じ、5人によるグループの演奏スタイルが貫かれていて、最初から最後までスムーズに耳に入ってくる。

 フランス人でケルト音楽の影響色が濃いギタリストとしては、ピエール・ベンスーザンが一番知られていると思うが、素晴らしいギタリストはまだまだたくさんいる。アンサンブル・スタイルということでも含め、このソイグの演奏は非常に質の高いものと言って間違いはない。

 残念ながら、日本では彼のアルバムを入手するのは難しそうである。ジャケットの画像にリンクを張っているのは本アルバムの発売元のレーベルで、インターネット経由で購入できそうではある。ただ、日本に発送してくれるのどうかについては未確認なのでご注意いただきたい。

January 01, 2007

●本年もよろしくお願いいたします

本weblogも、立ち上げ当初は順調に書き込んでいましたが、途中で長いブランクがありました。
それでも、大勢の方に訪れていた抱いたこと、嬉しく思っております。
今年もがんばっていい音楽を紹介していくつもりですので、どうぞよろしくお願いいたします。

素晴らしい音楽とともに、すべての人が平和で穏やかに過ごせますように祈りつつ。


Ken Oya Acoustic Guitars 大屋 建

December 09, 2006

●Pascal Bournet: Solace - Celtic Spirit

PascalBournet_solace.jpg

Pascal Bournet (g)
Robert Le Gall (vln, mandola, b, per)
Benoit Sauve (recorders)
Hector "Tachi" Gomez (per)

 ケルト音楽というと、アイルランドを中心としたものだとずっと思っていたが、最近になって、そもそもケルト民族がどのようにしてアイルランドにたどり着いたかを考えれば、ヨーロッパ各地にケルト文化があってもおかしくないことに気付いた。ケルト民族はヨーロッパ中西部を支配していたが、紀元前3世紀頃から南からローマ帝国が勢力を伸ばし、次々とケルト圏を征服していく。さらには、当方からゲルマン民族が押し寄せ、ケルト民族は西へ西へと追いやられていってしまったのである。こうしてみれば、ヨーロッパ西部を中心にケルト文化が残っていることは何ら不思議なことではない。
 フランスに目を移すと、パリからTGVで2時間ほど西に行ったブルターニュ地方はケルト文化圏である。ブルターニュのロリアン市では毎年国際ケルト民族フェスティバルが開催され、音楽を初めとするケルト文化を継承するアーティストたちが数多く集うことでも知られている。

 さて、今回取り上げるパスカル・ブルネはパリ生まれのフランス人。7歳でピアノを始め、しばらくしてクラシックギターの勉強を重ねていく一方で、ステファン・グラッペリ、アストル・ピアソラ等をはじめとする様々なジャンルの音楽に関心を示すようになる。その中で、18世紀の盲目のハーピスト、ターロック・オカロランの音楽研究に力を注いでいった。『Celebrating O'Carolan』というオカロランの曲集も2001年にリリースしている。
 オカロランの書いた曲は、現在ではギター曲として演奏されることも多く、Si Bheag Si Mhor等はかなりポピュラーな曲といってもよいだろう。

 本作は、ケルト音楽の研究成果を消化して書き上げたオリジナル曲のみで構成されている。参加メンバーはいずれもケルト音楽への造詣が深いだけでなく、世界各地の音楽を吸収していることもあり、特にパーカッションなどはアジア、アフリカ、中近東、南米などの楽器を用いているのが興味深い。

 ケルト音楽にスティール弦のギターが入っていることは珍しいことではないが、パスカルは全曲ナイロン弦ギターを演奏しているのが面白い。ナイロン弦の音によって、伝統的なアイリッシュの風合いが若干薄まり、ワールド音楽的な要素が前面に出てきている印象を受けるのだ。もちろん、パスカル自身がジャズやロック、ブルースの影響を受けていることも忘れてはいけないだろう。
 正確なピッキングと、きれいに粒立ちのそろった音。ダンス曲のスタイルであるジグでは、リコーダーとユニゾンで小気味良いフレーズを披露したかと思うと、クラシックの楽曲のように重厚なスタイルの曲もある。全編に共通しているのは、非常にメロディアスな曲だということだろうか。聴く者の中にスッと入ってくるのである。それでいて、曲のバリエーションも豊富なのが素晴らしい。

 パスカルのことを知ったのは、以前ブルターニュに旅行をしたときのことだった。地元のCDショップでいいギター音楽がないかと探していたときに巡り合ったのである。聞いたことがなかった人なので、おそらく日本ではほとんど知られていないだろうと思ったが、知り合いのギタリストに紹介したところ、彼のオカロランの曲集は日本のCD屋で手に入れることができるという情報をもらい、ビックリした。
 パスカルが演奏しているのは、なかなか爆発的な人気の出るジャンルではないので、生の演奏に触れる機会を得るのは難しいだろう。最近は日本でもケルト音楽のイベントが開催されるようになって来た。このようなイベントでもいいから、何とか来日をして欲しいアーティストの一人である。

December 01, 2006

●GARO: GARO Box

Garo_box.jpg

堀内護 (vo, g)
日高富明 (vo, g)
大野 真澄 (vo, g)
 他

 ガロの歌を最初に聴いたのは、おそらく『学生街の喫茶店』の大ヒットのときだったと思う。その後も、数々のヒットを飛ばしたのであるが、ギターとコーラスが若干印象には残るものの、当時は数多くあったポップス色が強いフォーク系のグループという程度の認識しかなかった。ただ、マーティンの最上位機種のD-45(1970年ごろの定価が75万円くらいだったようである)を持っていたので、貧乏なイメージの強かったフォークシンガーと比べて、ずいぶんとお金を持っているんだなぁと思ったことを覚えている。

 お小遣いの少ない小学生にとって、ガロのメジャーなヒット曲は、わざわざレコードを買いたいと思うほどではなかった。最初に彼らの曲を耳にしていらずいぶんたった後のことだが、ラジオから聞こえてくる『一本の煙草』という曲が、とてもおしゃれで気になった。当時は東京の大井町に住んでいたのだが、、同級生の実家でもあったアップルレコードという行きつけのレコード店に、シングル盤を探しに行ったのは、その直後のことだった。
 お目当てのシングル盤はすぐに見つかり、白黒の渋いジャケットに惹かれつつも、「他に何かいいものがあるかもしれない」と思い、フォーク系のアーティストのシングルを物色してみることにした。そこで、もう一つ気になっていたアリスの『紫陽花』というシングルを見つけてしまった。どちらを買おうか、かなり長い時間迷った末、なんと手にしたのは、アリスのシングル。いまや演歌歌手となってしまったベーヤンこと堀内孝雄がメインボーカルの曲である。今思い起こしても、かなり演歌色の強い曲といってもよいものだった。
 そんなわけで、ガロのレコードを手にする機会を自ら逃してしまった。その後はロック~フュージョン~ジャズへと走っていく少年にとって、ポップス色(それもたぶんに歌謡曲的な要素が含まれていた)の強いフォークはもはやおしゃれなものとは映らず、長いこと思い出すこともない存在となっていた。

GARO_anthorogy.jpg

 大人になってかなりしてから、ガロがよく聴いていたCSN&Yのコピーバンドから始まったことを知り、俄然興味がわいてきた。
 すでに、彼らのCDは入手困難で、唯一手に入ったのがシングルリリースを中心にしたヒット曲集のアルバムのみ。ギターとコーラスには確かにCSY&Y的な雰囲気は感じられるものの、グイグイ著ひきつけられるほどの魅力は感じられない。
 いろいろと調べていくと、ファーストアルバムが一番CSN&Yの影響が濃い演奏となっていること、所属事務所(もしくはレコード会社)の意向で、ヒットを狙った路線を強いられ、なかなか自分たちのやりたかった音楽ができなかったことなどがわかってきた。そこで、ファーストアルバムを入手しようとしたところ、すでに廃盤。時折オークションで見かけても、1万円近くの値段で取引されているような状態だった。

 そうこうしているうちに、オリジナルアルバム8枚と未発表曲、テイク、ライブなどを収録したCD2枚とDVD1枚を組み合わせた本ボックスセットがリリースされるという情報を掴んだ。確かにセットとなると値段は高いものの、プレミアがついているものを買うことを考えたら、はるかにお得。おまけに、未発表曲にはCSN&Yのカバー演奏も含まれているというから、これは買わないわけにはいかない。

 完全予約生産というこのボックスセットは当初2006年8月にリリースされる予定だったが、DVDに収録しようとしていたCSN&Yの曲の使用承諾を得るのが難航し、発売は延期。結局、映像収録分は許可が下りず(ライブでのカバー演奏は収録されている)に内容を若干変更して11月末にリリースと相成った。すでにamazonでは在庫切れとなっているので、これから注文をしても入手できるかどうかはわからない。

 発売順にCD全10枚を続けて聞くと、事務所側がやらせたかったことと自分たちが本当にやりたかったこととの狭間でメンバーが苦しみながら音楽制作をしていたことが痛いほど伝わってくる。時折顔を出す、変則チューニングを多用したアコースティック・ギターの音と3声のコーラスは、確かにCSN&Yの影響がひしひしと現れている。当時ヒットしていた曲ではなくこれらの曲を聴いていれば、どっぷりとガロの音楽に浸っていたかもしれないほどだ。

 解散ライブの様子も一部収録されているが、解散の挨拶をメンバーがした後に「最後の曲です」といって演奏するのがTeach Your Children。そしておそらく続けて演奏されたのであろうFind the Cost of Freedom。Find~はCSN&Yがライブの最後にアコースティック・ギターだけを持って演奏する曲。途中から伴奏が一切なくなり、アカペラコーラスだけになる。グループの解散の最後にこの曲を持ってくることに、彼らの置かれていた状況の複雑さを垣間見たような気がした。

 残念なことに、トミーこと日高富明氏は1986年に36歳の若さで自ら命を絶つ。ガロとしての生演奏を耳にすることは二度とできないのである。高かった音楽性と、市場に翻弄されたグループとしての運と不運。音楽は、やはりアーティスト自身が内から湧き上がる思いとともに作り上げていくものだと感じずにはいられない。

November 26, 2006

●Kristina Olsen: Live From Around the World

KristinaOlsen_Live.jpg

Kristina Olsen (vo, g, p)
Nina Gerber (g)
Ed Johnson (chorus)
Kim Scanlon (chorus)
Martin Pearson (chorus)
Al Petteway (g)

 アメリカでギター製作の修行をしているときは、月曜から金曜までは工房で通常の作業、土曜日は楽器店でリペアの修行、日曜日は基本的に休みというパターンだった。日曜日には、工房で作業をしていることが多かったのだが、毎週のようにちょっと時間を作っては隣町のバークレーまで出かけていた。
 UCバークレー校(ある年代以上の人にとっては、ダスティン・ホフマン主演の『卒業』という映画の舞台にもなった大学として記憶にとどまっているかもしれない)の近くは、今では死語となってしまったヒッピースタイルの人々がアメリカ全国から集まっていたりと、ごちゃごちゃとしていて、とても楽しい場所だった。
 まず覗くのは、MOEという古本屋。まめに探していると、すでに絶版になっていたギター製作に関する書籍が見つかったりしたものだった。そしてお決まりのコースは、AMOEBAとRASPUTINという2軒のCD屋。いずれも中古盤の品揃えが豊富で、毎回1枚6ドル以下のもの限定で探しても、あっという間に欲しいものが見つかってしまうヤバイ場所だった。

 お気に入りのアーティストのCDを探したのはもちろんのことだったが、雑誌や書籍(一番頼りにしていたのは、『All Music Guide』という本。最近では、Web版をいつも参考にしている。)をチェックしながら、アコースティック・ギターが聴きもののアーティストを探すのも楽しみの一つだった。クリスティーナ・オルセンもこうやって出会ったアーティストの一人だった。

 このCDをかける前にまずビックリしたのはトラック数が24もあったこと。再生してみるとなぞは解けたのだが、ライブ演奏を集めたこのアルバムでは、曲間のMCにまでトラックナンバーをふっていたのであった。肝心の演奏はというと、比較的ブルース色の強いギターとパンチの効いたクリスティーナの歌声ではあったが、最初の印象では、自分の好みと必ずしもあっていたわけではなかったこともあり、あまりパッとした感じを受けなかった。

 それでも、繰り返し聴いているうちにだんだんと良さが伝わってくるようになった。なんといってもMCが絶妙で、話の内容が次の曲へのうまい導入にもなっている。なるほど、これならばMCにトラックナンバーをふりたくなる気持ちも良くわかる。ほとんどは一人での弾き語りだが、数曲、ニナ・ガーバーを始め、素晴らしいサポート・プレイヤーをバックに演奏している。ギターもブルース色が確かに強いが、オールドスタイルのものというよりは、時折ジャズ・フレーバーのフレーズもちりばめられていて、なんとも心地よい。最初の印象などは、もうどこ吹く風である。

 1957年生まれの彼女が最初のCDをリリースしたのは1992年。主にコーヒーハウスやフォーク・フェスティバルなどでの演奏活動をおこなっていたのであるが、キャリアの長さからすると遅咲きといってもいいだろう。

 日本ではあまり知られていないが、シンプルなスタイルの素晴らしいシンガー・ソング・ライターがまだまだたくさんいる。これが音楽大国アメリカの底力なのかもしれない。