« Bill Evans: Waltz for Debby | main | Bill Evans: You Must Believe in Spring »

August 02, 2006

●Larry Coryell: Quartet

LarryCoryell_quartet.jpg

Larry Coryell (g)
Miroslav Vitous (b)

 ビル・エバンスつながりでもう一枚紹介したい。ここでは再度登場となるが、ラリー・コリエルのミロスラフ・ヴィトウスどのデュオアルバムである。タイトルが『Quartet』(4重奏の意味)とあるのは、ビル・エバンスとスコット・ラファロにインスパイヤされてこのアルバムを作ったためである。

 ビルへのトリビュートとして、先日紹介したジョン・マクラフリンの『Time Remembered』とはある意味、好対照なアルバムに仕上がっているのがとても興味深い。ジョンはビルのリリシズムに焦点を当てたの対して、ラリーはインタープレイをその中心に置いているのである。どちらも、ビル・エバンスを語る上では重要なファクターなのだが、同じようにジャズ・ギター界に変革をもたらしたジョンとラリーが、違ったアプローチからビルの音楽を見つめなおしているわけである。

 ミロスラフ・ヴィトウスはチェコ生まれ。小さい頃からヴァイオリン、ピアノを習ってきた彼がベースを弾き始めたのが14歳のとき。その後、ウィーンでのコンクールで優勝し、奨学金を得てアメリカ東海岸のバークリー音楽院へと留学をする。チック・コリア、ハービー・マンなどのレコーディングに参加した後、自己のアルバムも製作する。彼が広く脚光を浴びるようになったのは、ジョー・ザビヌル、ウェイン・ショーターらと一緒にウエザー・リポートを結成してからだろう。ウエザー・リポートの最初の3枚のアルバムに参加した後、ミロスラフはグループを離れ、ロスに移り住んで新しい楽器の開発に取り組んだり、音楽教育に力を注いできた。最近では、ちっく・こりあとの演奏や、自身のリーダーアルバムをECMからリリースしたりと、マイペースでの演奏活動を続けている。

 ジャズでギターとベースのデュオアルバムといえば、ロン・カーターとジム・ホールの『Alone Together』が真っ先に思い浮かぶが、歴史的名盤との評価が高いロンとジムのものに比べると、ラリーとミロスラフの演奏はストレート・アヘッドな4ビートジャズというよりは、もっとコンテンポラリーな印象が強い。それでいて、難解さはあまり感じさせないので、聴くものの中にスッと入って来やすい。時折アルコ奏法(弓によりベース演奏)を交えるミロスラフの演奏はとても美しく、また力強い。

 ベースがギターをサポートしているというよりは、ギターとベースがお互いに重なり合うように絡みつつあるのは、やはりビルが得意としていたインタープレイ的な要素が根底にあるからだ。Quartetというタイトルの意味を考えながらこのアルバムを聴くと、いっそうイメージが膨らむのが楽しい。
 

コメントする

(初めてのコメントの時は、コメントが表示されるためにこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまでコメントは表示されませんのでしばらくお待ちください)