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April 23, 2006

●Ralph Towner: Solo Concert

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Ralph Towner (g)

 大雑把に言って、ギターを弾くのに2つのスタイルがある。一つは、フラットピックを使う奏法。もう一つは、フィンガースタイルと呼ぶ指弾きである。指で弾く場合、爪をどのくらい伸ばしてどう使うかによって、音が変わってくる。爪を使う割合が増えれば、輪郭のたった硬質な音となるし、指の肉の部分を主に使えば、タッチはソフトで芯のある音となる。ナイロン弦は、スティール弦に比べて柔らかいため、ナイロン弦を主に使う人はスティール弦のギターを弾くと爪を痛めてしまうことが多い。そのため、両方を併用する人がごくまれである。

 ラルフは、ナイロン弦での演奏が中心だが、スティール弦、それも弦の張力が強い12弦ギターを併用する、非常に珍しいギタリストである。場合によっては、1曲ごとにギターを持ちかえ、ナイロン弦とスティールの12弦を交互に弾くというのは、普通では考えられないことだが、彼はいとも簡単にやってのけている。

 繊細な音作りを得意とするECMレーベルの録音で、コンサートのライブ録音とは思えないほどクリアーな音にはビックリさせられる。ジャケットの写真を見ると、ブリッジとネックの付け根をそれぞれ狙ったマイクのセット(ノイマンのU87と思えるラージダイアフラムのセットと、AKG451スタイルの小径ダイアフラムのセットを併用しているので、計4本のマイクを使用)、少し離してアンビエントマイクを1本セットしている。さすがに、レコーディングを重視したセッティングで、コンサートでの見栄えは二の次にしているところが、いかにもECMらしい。

 ラルフの演奏を最初に聞いたのは、彼がソロ活動と並行して演奏活動をおこなっているオレゴンというグループでの演奏。ラリー・コリエルとの共演盤、『The Restful Mind』である。オレゴンは、ラルフとタブラ、コンガ奏者のコリン・ウォルコットを中心としたユニットで、インド音楽などの影響も取り入れた、エスニックテイストのある、独特の音楽世界を繰り広げている。残念なことに、コリンは後に事故で他界してしまうが、その後も、メンバーを替え、現在も活動を続けている。

 ソロ演奏では、クラシカルな要素と、ジャズの即興的な要素を非常にうまくミックスしている。緻密な構成を感じさせる一方で、自由奔放に展開されるパッセージも織り交ぜ、最初から最後まで聴く者を惹きつけてやまない。学者然としたその風貌にマッチした、知的な香りのする音楽がなんとも心地よいものだ。

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