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May 21, 2006

●Pat Metheny: Pat Metheny Group

PatMetheny_PMG.jpg

Pat Metheny (g)
Lyle Mays (p, key, autoharp)
Mark Egan (b)
Dan Gottlieb (ds)

 パット・メセニーを最初に聞いたときのことは、あまり覚えていない。おそらく、このアルバムが発売された頃、日本でもだんだんと注目されていたはずだが、ギター関係の雑誌ではよく取り上げられていた。その中で、一番印象的だったのが、機材に関する話である。当時は、レコーディングの現場などでのみ使われていた、レキシコンのプライムタイムというディレイをステレオで使って、不思議な音の広がりを作るという話である。今でこそ、ギター用のコンパクトタイプではないものをラックに入れてライブに使うことは珍しくは無いが、その頃は、こんなことを考えて、実際にやってしまうとは、「なんてクレイジーなんだ」と思ったものである。

 パットが音楽を志すきっかけとなったのが、13歳のときに見たヴィブラホン奏者ゲイリー・バートンのグループを地元で見たときのことだったという。当時、このグループには若き日のラリー・コリエルが参加しており、おりしもジャズとロックを融合したスタイルのギターを弾きまくっていたのである。その後、フロリダをベースに音楽活動をおこなう中、ジャコ・パストリアスなどともつながりを持つようになっていく。

 ECMからの3作目に当たる本作で、初めて「パット・メセニー・グループ(PMG)」という名称を使うようになる。現在では、ライル・メイズとの共演に限り、PMGとクレジットするということである。ECMを離れた辺りから、グループの編成も変わっていき、ワールド・ミュージック的な要素も取り入れた、グループトータルのサウンドメイキングがより鮮明になっていくのに対し、この時代の作品は、シンプルな編成ながら必要な音が必要なだけあるという印象を受ける。
 ライルはピアノ主体の演奏で、時折、キース・ジャレット風のフレーズが飛び出したりするのも、なんともおかしい。ECMならではのことなのかもしれない。マーク・イーガンはジャコに並ぶフレットレス・ベースの使い手として知られているが、ジャコを意識しつつも、フレージングやハーモニックスの使い方など、独特のスタイルを感じさせる。パットは、空間系のエフェクトを多用しているものの、決して線は細くなく、パワフルな演奏を聞かせてくれる。
 ちなみに、国内盤では1曲目の邦題『思い出のサン・ロレンツォ』がそのままアルバムタイトルになっている。

 最近のパットの演奏は今ひとつ、と思っている人で、よりジャズ色の強いものを好む人にとって、この時代の演奏はしっくり来るはずだ。すべての要素を計算しつくしたような現在のスタイルも素晴らしいが、このアルバムのように少数の実力派メンバーで、思い切り自由に演奏するのも聴いてみたいと思う。

コメント

パットメセニーはほとんど聴いていないのですが、当時1枚だけ聴いたのがこれだったと思います。12弦ソロのイントロからベースのメロで始まるマイナーチューンがあったと思います。テープに入れて擦り切れるほど聴きましたね。

>いちろさん
いらっしゃいませ。

おそらく4曲目の「Aprilwind」ですね。この曲が印象に残っているとは、なかなか渋いですね。

ECM時代のパット・メセニーは、その後のGeffenレーベルからリリースした作品に比べると、編成もシンプルで、ストレートアヘッドなジャズに寄っています。ただし、「ECM流」という注釈つきではありますが。ギタリストとしての側面からすると、やはりこの時代がお勧めです。

Geffen以降の作品もいずれ紹介するつもりですが、ワールドミュージック的な要素が強まっていきますね。

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