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May 07, 2006

●John Abercrombie: Arcade

JohnAbercrombie_arch.jpg

John Abercrombie (g, e-mandolin)
Richie Beirach (p)
George Mraz (b)
Peter Donald (ds)

 長いことCD化を待ち望んでいたものが、ある時、突然リリースされることがある。そのため、時折CD通販サイトをチェックしなければと思っている。本作もそんなものの一つだ。ここでも何回か言及したECMレーベルの作品だが、考えてみると、初めて買ったECMのレコードがこれだった。

 ジョン・アバークロンビーは派手さは無いものの、玄人好みのギタリストといえるだろう。このアルバムはLPで発売されたときの邦題が『マジカル・フィンガー』。「驚異のテクニック」といったようなキャッチコピーがついていたように記憶している。ここで、再三書いているが、この類のコピーにはめっぽう弱かった高校生時代の私は、なけなしの小遣いをはたいて手に入れたのであった。確かにすごいテクニックではあった。ただ、あまりにも流暢に音が流れていくので、弾きまくるという印象はまったく感じなかった。それよりも、ディレイを多用するジョンのギターの音や、リッチー・バイラークのピアノ、そして時折アルコ奏法を交えたジョージ・ムラーツのベースは非常に透明感があり、ユニットのまとまりの素晴らしさが目立った。ドラムスのピーター・ドナルドはあまりよく知らないが、ルー・タバキンなどと演奏をしていたようである。ここでは、他の3人が作り出す音空間に溶け込むようなシンバル・ワークがとてもよい。

 不幸なことに、ECMのマンフレート・アイヒャーと、当時はこのレーベルで中心的な活動をしていたリッチーは、このアルバムをきっかけに、音楽面での確執が表面化し、しばらくして袂を分かつことになってしまう。アイヒャーにとって、この問題は思いのほか大きかったようで、ジョン名義でリッチーが参加した3枚のLPはECMのリストから抹消されてしまうという結末を迎える。その経緯を考えると、本作がCDとなって再び日の目を見るようになったことは、本当の驚くべきことであろう。

 ジョンの一聴するとつかみどころが無く、浮遊感の漂うギターと、ビル・エバンスの流れを汲み、リリカルでありながら、時折きらめくようなフレーズが輝いているリッチーのピアノが、素晴らしくマッチしている。ジャンは、この後にもマーク・ジョンソン、ピーター・アースキンとのレギュラートリオでも素晴らしい演奏を残しているが、音楽的な完成度の高さでは、本作が一押しだ。

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