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April 16, 2006

●Juanjo Dominguez: Plays Astor Piazzolla

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Juanjo Dominguez (g)

 ギターを製作するようになって、以前よりもナイロン弦を用いた、クラシック・ギターやフラメンコの演奏を聴くようになった。同じような外見でも、自分で作るスティール弦のギターとは内部の構造も違い、音作りのアプローチも異なる。ナイロン弦のギターは、弦の特性上、ふくよかな低音は出しやすいが、ピンと通る高音を出すのが難しい。一方、スティール弦では、キンとした音が出しやすい一方、ふくよかな低音を出すのが大変で、ここが製作家の腕の見せ所となる。いずれにしても、「いい楽器」というのは低音から高音までバランス(音量だけではなく)が取れているものなのである。まったく別方向からのアプローチを持つ同じ「ギター」というものを見つめることで、それまでの自分の考え方から一歩離れてモノを理解するきっかけとなるものだ。

 ここのところ、一番のヘビーローテーションでかけているのが本作。ナイロン弦のギターで、「ピンッ」と音が立っている好例である。ファンホ・ドミンゲスはアルゼンチンのギタリストで、クラシックに分類するのがいいのかもしれないが、ピアソラ曲集ということもあり、今回はワールド・ミュージックにカテゴライズした。

 ピアソラの曲はクラシックやジャズのプレイヤーがよく取り上げ、名演も多い。その中においても、ファンホのこの作品の仕上がりは特筆すべきものだ。同じアルゼンチン人として、ピアソラが何を考え、感じて曲を書いたのかということを意識し、ギター曲にアレンジしたという。タンゴ五重奏団でバンドネオンやヴァイオリンが繰り広げていたスリリングな演奏パートまでも、ギターの音だけで表現し、単調さなどまったく感じさせず、恐ろしいばかりの緊張感を最初から最後まで持ち続けている。音の立ち上がりとスピード感が全面に出た演奏は、まさしくナイロン弦の持ち味を最大限活かしたもので、これほどピタリとはまる感覚も珍しい。曲によってはギターを2本、3本と多重録音しているが、自分の演奏を重ねたからこそ、ここまでピタリと合ったものになっているのであろう。

 音数も多いので、音楽が「饒舌すぎるのでは」と心配してしまいそうだが、それも杞憂に過ぎないとすぐに気付く。すばらしい演奏テクニックに余りある歌心が、その音にはある。アルゼンチン人にとってタンゴ音楽、そしてピアソラの音楽がどのようなものなのかを、ファンホのギターがわれわれに投げかけている。

コメント

CDを手に入れて、聴き始めました。
リリカルなタッチで、粒立ちのよい中高音が印象的です。
2~3本の多重録音が、最初は面食らいましたが、聞き込むと自然になっています。
しばらく、うちのBGMになってくれそうです。

>純之助さん
いらっしゃいませ。

私も、最初は多重録音のものは今ひとつかなぁと思っていましたが、気がつくと、洪水のように押し寄せる音に魅了されていました。

コンサートでは、兄弟も参加してギターのアンサンブルを組んだりもするようです。一昨年、昨年とかなりの数の日本ツアーをこなしたようですが、ぜひともまた来日をしてもらいたいですね。

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